乳腺外科
乳腺外科
乳腺外科では、乳房に関するさまざまな症状(しこり、痛み、分泌など)に対しての診断と治療を行います。自己判断や周りの情報に惑わされることなく、以下のような症状がある方はお気軽にご相談下さい。
- 乳房に「しこり」を触れる
- 腕を挙げたとき、乳房に「えくぼ」「ひきつれ」がある
- 乳首からの分泌(レンガ色)がある
- 乳首にびらんやただれを認める
- 乳房全体が赤く腫れていたり、乳房に潰瘍ができて治らない
- わきの下のしこり(硬いリンパ節)などを触れる
乳房の仕組み
乳房は、出産時に乳汁を分泌する大切な役割をもつ皮膚の付属器官です。その中には「乳腺」と呼ばれる腺組織と脂肪組織、血管、神経などが存在しています。乳腺組織は、15~20の「腺葉」に分かれ、さらに各腺葉は多数の「小葉」に枝分かれしています。小葉は乳汁を分泌する小さな「腺房」が集まってできています。 各腺葉からは乳管が出ていて、小葉や腺房と連絡し合いながら、最終的に主乳管となって乳頭(乳首)に達します。
乳がんとは乳房の中にある乳腺にできるがんです
乳がんはこの乳腺を構成している乳管や小葉の内腔(内がわ)を裏打ちしている上皮細胞から発生します。がん細胞が乳管や小葉の中にとどまっているものを「非浸潤がん」あるいは「乳管内がん」、乳管や小葉を包む基底膜を破って外に出ているものを 「浸潤がん」といいます。浸潤がんでは、周囲の組織に染み込むように広がり破壊する性質があります。一方、「非浸潤がん」は乳管外に浸潤せず、乳管の中に留まっています。そのため、遠隔転移を起こさない、おとなしいがんともいえます。
乳腺の主な疾患
乳腺症
乳腺症は30~40歳代の女性に多くみられる乳腺の良性疾患です。主な症状としては硬結、疼痛(乳房痛)、異常乳頭分泌が挙げられます。乳腺症には、主として卵巣から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンというホルモンがかかわっており、閉経後に卵巣機能が低下するとこれらの症状は自然に消失します。硬結は片側あるいは両側の乳房に大きさが不揃いの平らで硬いしこりとして触れることが多く、月経前に増大し、月経後に縮小します。硬結部は何もしないでも痛むか、押さえると痛むことが多く、この痛みも月経周期と連動します。乳腺症に伴う異常乳頭分泌の性状はサラッとした水のような漿液性、乳汁性あるいは血性などさまざまです。
漿液性あるいは、乳汁性の場合はほとんど問題ありません。血性乳頭分泌がみられた場合には、乳腺の良性疾患の一種である乳管過形成や乳頭腫である頻度が高いですが、乳がんが隠れている可能性もあるので詳細な検査が必要になります。月経周期と連動するしこりや痛みはあまり心配する必要はありませんが、月経周期に関係のないしこりに気づいたら当院を受診してください。
乳腺炎
乳腺炎とは乳汁のうっ滞(滞り)や細菌感染によって起こる乳房の炎症で、赤く腫れたり、痛み、うみ、しこりなどがみられます。特に授乳期には母乳が乳房内にたまり炎症を起こす、うっ滞性乳腺炎が多くみられます。乳頭から細菌が侵入すると、化膿性乳腺炎となって、うみが出るようになります。症状を改善させるために、皮膚を切開してうみを出しやすくする処置が行われることがあります。
一方、授乳期以外に、乳房の広い範囲に乳腺炎が起こることもあります。原因はよくわかっていませんが、乳房の中にたまった分泌液にリンパ球などが反応してできるのではないかと考えられています。また、乳輪下にうみがたまることがあります(乳輪下膿瘍といいます)。これは陥没乳頭の人に起こりやすく、治りにくい乳腺炎でときに手術が必要になる場合があります。これらの乳腺炎は乳がん発症とは直接関係ありません。ただし、痛みがないのに乳房が腫れる場合は、まれに炎症性の乳がんであることもありますので、早めの受診をおすすめします。
乳腺線維腺腫
乳腺線維腺腫とは乳房の良性腫瘍で、10歳代後半から40歳代の閉経前の女性に多く起こります。ころころとしたしこりで、触ってみるとよく動きます。マンモグラフィや超音波検査などの画像検査や針生検で線維腺腫と診断されれば、特別な治療は必要なく、乳がん発症とはあまり関係ありません。閉経後には小さくなっていくことが多いのですが、しこりが急速に大きくなる場合は切除することもあります。
葉状腫瘍
初期のものは線維腺腫に似ているものの、急速に大きくなることが多いのが特徴です。ほとんどは良性ですが、なかには良性と悪性の中間のものや転移を起こす可能性がやや高い悪性のものの場合があります。いずれにしても、通常は摘出が必要で、治療の原則は手術による腫瘍の完全摘出です。葉状腫瘍は腫瘍のみをくり抜いて摘出するだけでは周囲に再発しやすいため、腫瘍より少し大きめの範囲を摘出します。また、針生検だけでは線維腺腫と区別がつかないこともあるので、臨床経過から葉状腫瘍が疑われる場合は摘出して診断することもあります。
セカンドオピニオンに対応いたします
セカンドオピニオンを聞くことによって、診断、治療、検査などさまざまな状況で、患者さん自身が自分の診療を正しく理解し、十分に納得することができるため、安心して診療を受けることができるでしょう。
セカンドオピニオンとは
セカンドオピニオンを直訳すると「第2の意見」です。つまり、担当医の意見が第1の意見であるのに対し、他の医師の意見をセカンドオピニオンと呼びます。セカンドオピニオンを聞くことは、担当医から提示された診療内容を信じないとか、あるいは他の医療機関に移ることを意味するものではありません。
セカンドオピニオンの注意点
自分の病気に関して正しい情報を得ることは大切です。そして、正しい診断あるいは標準治療を理解して、最善の医療を受けることが大切です。ところが、自分の気に入った意見をいってくれる医師に出会うまで、何カ所もの医療機関を受診する患者さんがいます。このことをドクターショッピングといいます。
例えば、抗がん剤は受けたくないと思っていても、抗がん剤を行ったほうがよりよい経過をもたらす場合、抗がん剤治療の専門家から、効果と副作用のバランスについて正確な情報を得ることが大切です。そのうえでどのような治療を選択するか、最終的には自分自身で決定しなくてはなりません。